歯科コラム

歯科コラム

  • 歯周病対策でがん予防

    歯と健康

    歯周病ががんのリスクを高める可能性

    歯周病は口腔内だけでなく、全身に影響を及ぼしていることはご存じだと思います。歯周病菌によって歯肉に炎症を起こし、その時に出てくる毒性物質が歯肉の血管から全身に入り、動脈硬化・狭心症・脳梗塞・心筋梗塞、誤嚥性肺炎・糖尿病・認知症などを引き起こしたり、悪化させる原因となります。さらに近年の研究によって胃がんや食道がんのリスクを高めることがわかってきました。
    米国ハーバード大学で女性98,459名、男性49,685名を対象にした1988年から行われた約30年間に及ぶ追跡調査によれば、このフォローアップ期間に食道がんが199症例、胃がんは238症例が報告されています。がんの発症と歯周病の罹患や歯を失っていることとの関係を分析したところ、歯周病になることにより食道がんのリスクが43%、胃がんのリスクが52%高くなることがわかりました。

    食道がんの細胞に歯周病菌発見

    日本の国立がんセンターの調査では、食道がんの細胞からトレポネーマ・デンティコーラという歯周病菌が高い割合で検出されたという報告もあります。その発生のメカニズムには歯周病菌が口腔内から食道粘膜に下りてきた歯周病菌によって炎症が起き、慢性的な炎症によって正常細胞のDNAが傷んで最終的に発がんを招いてしまうというものです。
    慢性的な炎症が要注意なのは、炎症によって発生する活性酸素が悪さをするからです。活性酸素の影響によって遺伝子は変化しないものの、その機能が変わることで細胞のふるまいが変わる現象(エピジェネティックな変化)が起きたり、遺伝子そのものに変異が起こす可能性もあり、がんの発症のきっかけともなってしまうからです。歯周病は30代から60代にかけての有病率が高く、歯周ポケットが4㎜以上と深かったり、出血するなどの歯周病の所見が見られる人の割合は3人に2人といわれています。歯周病は保険診療で検査や治療から手術も受けられるので、まずは歯科医院を受診することをおすすめします。
    歯周病治療を受けることで歯肉の健康が取り戻せるだけでなく、さまざまな疾患のリスクを下げることができます。日々の歯磨き・口腔ケアを見直し、歯科医院での定期検診で全身の健康につなげましょう。

  • むし歯対策、甘い物は「量」より「時間」

    歯と健康

    寝る前に甘いもの、歯ブラシすれば心配ない?

    寝る前につい甘いものをつまんだり、果物を食べたりした際に、念入りに歯ブラシをしておけば大丈夫、むし歯になる心配はないと思っている方、じつはこれは勘違いです。
    通常、口腔内は弱酸性から中性(pH6.8~7)の状態に保たれていますが、甘いお菓子などを食べると口内が酸性に傾いてしまうのです。歯の表面を覆うエナメル質はpH5.5以下になると急激に溶け出す性質があるため、甘いものを食べて口内がpH5以下になってしまうと歯の表面のカルシウムが溶け出し、初期虫歯のような状態(脱灰)になってしまうのです。日中間は唾液もよく分泌されて通常は2~3時間かけてpHは中性近くまで戻り、脱灰した歯は再びカルシウムを取り入れ修復(再石灰化)されていきます。しかし、就寝中は唾液の分泌量が10分の1にまで減ってしまうため、一度酸性に傾いた状態がなかなか元に戻らず、歯の表面の脱灰が進むため、むし歯のリスクは高まるということなのです。たとえ歯を磨いても酸性の状態は改善しないということが注意点で、だから寝る前に甘い物を食べるのは避けた方が良いのです。

    セルフケアでは磨き残しが2割

    同様のことが間食についても言え食後、唾液による再石灰化が行われている最中におやつなどで再び口の中が酸性になると、せっかくの歯の修復のチャンスが奪われむし歯のリスクが高くなるのです。とくにだらだらと時間をかけて間食するのはよくありません。
    このように虫歯予防には歯磨きだけでなく、食習慣の管理も重要だといえます。食事をしたあとは再石灰化のための時間をしっかり取る、夜、就寝前は食べないというのが理想です。ただ、間食もたまにはしたいという場合は短い時間で食べきり、食後はむし歯になりにくいガム(砂糖成分を含まないキシリトール入り)を噛んで唾液量を増やすなど対策しておきましょう。
    むし歯に予防に甘い物は食べ過ぎないなど「量」を気にする人は多いと思いますが、「時間」の対策の方が大事だということを忘れずに日々の口腔ケアを行いたいものです。

  • 口臭予防はセルフケアとプロケアの両輪で

    歯と健康

    歯磨きの回数と口臭の意外な関係

    マスクを取る機会が増えて、気になるのが口臭という方もいらっしゃるかもしれません。その口臭について気になる調査結果が発表されていて、それは「1日2回歯磨きする人より3回する人の方が口臭は強い」というものです。口腔内のガスを測定するガス検出装置を使って口臭レベルを0~100に数値化し、口臭レベル30を超えると「周囲に臭いを発し始める」、50を超えると「周囲の人が気になるレベルの臭い」とし、50を超える人が1日2回歯磨きする人より3回する人の比率が高かったというのです(『口臭白書2019』より)。

    セルフケアでは磨き残しが2割

    口臭は大きく分けて2種類にわけられ、一時的にニオイが発生する生理的口臭(起床時や空腹時、食後や緊張時やストレス時の唾液分泌の減少で一時的に口臭が強くなるもの)と慢性的に口臭が発生する病的口臭とがあります。病的口臭の原因は歯周病・ドライマウス・虫歯(う蝕)や義歯の清掃不良、舌に付着した細菌のかたまりである舌苔等でとなります。こうした口腔内トラブルが原因の口臭はセルフケアだけでは解消できないため、歯科医に通院して治療を受けることが必要となります。
    歯周病やむし歯など口臭の原因ともなるお口のトラブルの多くは歯垢が落とし切れていないことが発端となることが多く、上手に歯を磨けている人でも歯ブラシだけでは約60%前後、デンタルフロスを使って80%までは落とせても、残りの20%は落とし切れていないといわれています。そのため、今回の実態調査のように歯磨き頻度が多い人でも歯垢がたまっていってしまい、口臭が強くなるという逆説的な結果がでても不思議ではないといえます。
    完璧ではないセルフケアを補うためには歯科医・歯科衛生士の「プロケア」が必要不可欠だということに納得がいくと思います。もちろん日頃の「セルフケア」があってこそですが、プロにお任せる部分はお任せするというスタンスが一番効率的で効果的な方法といえ、将来、自分の歯でおいしく食事をいただくための一つの投資と捉えてぜひ歯科クリニックに足を運んでいただければと思います。

  • 歯ブラシの効果的な使い方とは

    歯と健康

    歯ブラシにもつま先?かかとがある?

    熱いものは50~60℃まで

    新年を迎えて、今年も口腔ケアに地道に取り組んでいきましょう。 そこで正しい歯磨き法の再確認ですが磨き残しが多いのは歯と歯の間、歯ぐきとの境目、前歯の裏側があげられ、3大磨き残しポイントといわれています。この3大ポイントは歯垢もたまりやすいのでむし歯や歯周病のリスクが高くなります。むし歯や歯周病を招く危険な磨き残しを減らすにはどうしたらよいか大きな課題ですが、歯ブラシ全体を漫然と歯に当てるのではなく、歯ブラシの「つま先」や「かかと」、「わき」を使って効率よく磨く方法が推奨されています。
    歯ブラシのかかと?つま先?と思われた方が多いと思いますが、これは便宜上の呼び名でつま先はブラシの先の部分、かかとはその反対側の持ち手に近い部分(ネックに近い部分)、わきはブラシの両サイドです。

    そもそも猫舌とは

    具体的な歯ブラシの方法ですが、歯石がたまりやすい前歯の後ろは「かかと」を使ってかき出すようにします。奥歯の歯と歯の間やミゾが深い噛み合わせ面は「つま先」を入れ込むようにして小刻みに動かします。歯と歯肉の境には歯ブラシを45度の角度で当てると「ワキ」がピッタリと当たります。毛先が曲がらないくらいのやさしい力で細かくスライドするかんじで歯周ポケットを清掃します。
    歯ブラシの毛先が入らないところや磨きにくいところは歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシなどの『補助的清掃用具』を使うことをお勧めします。
    この『補助的清掃用具』と歯ブラシとどちらを先に使うか、その順番に迷う方もいらっしゃるかもしれませんが、実際に比較検討した論文によると、歯間ブラシやデンタルフロスを歯ブラシの前に使った方が清掃効果の面では高いという結果が出ています。その理由として、最初に歯間ブラシやデンタルフロスで汚れを浮き上がらせてから歯ブラシをする方が汚れが落ちやすいということと、磨き始めの集中力が高いうちに歯間ブラシやデンタルフロスを使ってより難しい場所を清掃する方が、疲労感や集中力が落ちぎみの後半に行うよりも効果的にプラーク除去が行えるからとされています。
    歯ブラシの習得も技術習得の1つです。コツを掴むまで練習が必要となりますが、その練習の過程ご自身で工夫と確認をしながら自分の歯の形や歯並びに合った磨き方を身に付けられるのがよいのではと思います。

    歯ブラシが先か?歯間ブラシが先か?
  • 口腔内のやけどに注意

    歯と健康

    熱いものは50~60℃まで

    熱いものは50~60℃まで

    冬場は鍋やおでん、シチューなど熱々のお料理がおいしい季節ですが、気をつけたいのは口の中のやけどです。口腔内の粘膜が耐えられるのは50~60℃までで、それ以上だとやけどを起こしていまい粘膜がざらざらになったり、ひどい場合は水ぶくれができたり皮がむけたりします。こうした経験された方も多いと思いますが、上あごの粘膜や舌先、唇などがヒリヒリと痛く、食事をするのも辛いものです。ただ、口腔内のやけどは体のほかの部分に比べて治りが早く、痛いのを我慢していると数日で治る場合が多く、これは唾液の殺菌作用や抗炎症作用のためといわれています。とはいえ、やけどがひどい場合は歯科医院のほか口腔外科、耳鼻咽喉科などが対象の診療科になりますので受診することをお勧めします。

    そもそも猫舌とは

    ここで気になるのは猫舌の人とそうでない人の違い?などですが、そもそも”猫舌”という概念は医学的な根拠はなく、むしろ食べ方の違いではないかといわれています。MRI(核磁気共鳴画像診断)のスペシャリストである東海大学工学部医用生体工学科教授の高原太郎医師が連続撮像できるMRIによって、猫舌の人とそうでない人との熱いお茶を飲んだときの舌の動きを比較した研究によってわかってきました。
    猫舌ではない人は、お茶が口に入ると舌が奥の方に後退させてできたスペースにいったんお茶を溜めてから喉へと流し込むようにしていたそうです。一方の猫舌の人は真逆で舌先を前に出して熱いお茶が舌にダイレクトに当たっていたということです。
    舌の奥の方が温度に関して比較的鈍感なので、猫舌の人も舌先を熱いものから逃がすような動きを収得すれば猫舌は克服しうるということです。その際、熱にもっとも敏感な舌先を下前歯の裏に隠すようにして丸め、熱いものを舌の奥に流し込むようにするのがコツです。箸よりはスプーンやフォークを使った方が熱い食事を奥に運びやすいかもしれません。
    ただ、こうした訓練もやけどをしてしまっては意味がありません。猫舌でない方もむやみに熱いものに挑戦して頻繁にやけどしてしまったりすると口腔ガンのリスクが高まる恐れもあるのであくまでほどほどを心がけてください。 こうしたお口の粘膜のトラブル(口内炎、口腔内の乾燥なども)がありましたら、お気軽にご相談ください。

    そもそも猫舌とは

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