歯科コラム

歯科コラム

  • 認知症予防は口腔ケアから

    歯と健康

    歯周病と認知症の関係

    歯周病と認知症の関係

    4人に1人が65歳以上となる日本の高齢化率(65歳以上の高齢者人口割合)は29.0%に達し、2025年には約30%、2060年には約40%に達すると見られています。お年寄りの割合が増えるに伴って社会問題化しているのが認知症患者の増加で、国としても「認知症施策推進綜合戦略」(新オレンジプラン:厚生労働省が関係府省庁と共同で平成27年に策定)を策定しています。そこで注目されるのは「認知症の発症予防」に「口腔機能の向上」を掲げていることです。
    口腔機能と認知症との関連については、残っている歯の本数が多いほど(入れ歯やインプラント等で口腔機能が回復できているケースも含め)認知症になりにくいことが報告されていますが、最新の研究によって認知症の7割を占める「アルツハイマー型認知症」と歯周病との関係が明らかになりつつあります。

    歯周病がアミロイドβの沈着を促進

    アルツハイマー型認知症は脳内にアミロイドβというたんぱく質が何らかの理由で排出されずに蓄積してしまうことが原因とされていますが、このアミロイドβの生成・蓄積に歯周病が大きく関わっていることがわかってきたのです。
    2020年に発表された九州大学と北京理工大(中国)らとの研究チームの報告によると、同研究チームが3週間に渡って歯周病菌を直接投与したマウスと正常なマウスの脳血管や脳細胞に蓄積されたアミロイドβの量を比較したところ、投与によって歯周病に感染したマウスにはアミロイドβを脳内に運ぶ「受容体」が脳血管の表面で増加し、脳細胞のアミロイドβ蓄積量が10倍に増加していることがわかりました。実際に歯周病菌を投与したマウスによる記憶実験では記憶力の低下が確認されたとのことです。
    このことから歯周病菌が歯肉の毛細血管から全身に運ばれることで、脳内にはアミロイドβの受容体(受け皿)が増え、アミロイドβが生成・蓄積されアルツハイマー病を発症させたり、症状を悪化させているというメカニズムが推測でき、歯を守るだけでなくご自身の健康を守るためにも徹底した口腔ケアが重要であることがわかります。⻭周病は初期の段階では症状がなく気づきにくい病気なので、歯科医院ての検診を積極的に受けて適切な治療を受けることが何よりも大切です。

  • 台風のあとは歯周病が悪化する!?

    歯と健康

    気候の変化と体調について

    気候の変化と体調について

    悪天候の日にきまって頭痛がしたり、だるくなったり──、「雨の日はどうも調子が悪いな」と感じる方はいらっしゃいませんか。こうした気候の変化と体調との関係は気のせいではなく、ぜんそくや関節痛、神経痛の症状があらわれたり、古い傷が痛んだりすることもあります。気象病とよばれるもので天気の変化によって引き起こされる何らかの身体的・精神的な不調のことをいいます。最近は気温や湿度だけでなく、気圧の変化も体調に影響することがわかってきました。
    口腔内もこの気象の急激な変化による影響を受けていてむし歯の痛みが増したり、歯周病が悪化して歯肉が腫れるなど急性の症状を引き起こすことがあります。

    気圧と気温の急激な変化が引き金に

    気象条件と歯周病との関係を研究しているのは岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の森田学教授らの研究グループで、森田教授は“飛行機に乗ると歯が痛くなる”と昔からよくいわれている現象に着目して、歯周病の悪化と天候との関係を調べ始めたとのことです。
    森田教授らは同大学病院歯科で歯周病ケアを受けている患者約2万人を調査、歯ぐきの腫れや痛みなどの急性症状が出た患者360人のうち、心身ストレスや外傷、不十分な口腔衛生、喫煙などの原因が特定できる患者をのぞくと153名が原因不明の急性化を起こしているとして選び出し、この男女153人(平均年齢68.7歳)を対象に、岡山地方の気象状況(風速、気圧、日照時間、雨量、温度、湿度)を照合して解析しました。その結果、「気圧の急激な変化」と「気温の急激な変化」が、歯周病の急性化の引き金になっていることが判明しました。さらには気圧が急激に低下した日の2日後と、気温の上昇が大きかった日の翌日に発症するケースが多かったということがわかりました。その詳しいメカニズムはまだ不明ですが、気象変化によって生態の恒常性のバランスが崩れ、免疫力が低下することが要因の一つではと推測しています。
    歯周病の急性化が起こるのは台風が通過した2日後がピークとのこと。これから本格的な台風シーズンを迎えますが、日頃の口腔ケアはもちろんですが事前に気圧、気温の変化が予測されるときには丁寧な歯ブラシや歯科医院でのプラークや歯石除去などのクリーニングを受けて事前の予防措置を心がけましょう。

  • 歯が生えてくる夢の薬

    歯と健康

    新薬の動物実験ではすでに成功

    新薬の動物実験ではすでに成功

    歯を失ってもまた新しい歯が生えてくる!?そんな夢のような薬の開発が日本の研究チームによって進められています。
    世界初の「歯生え薬」の臨床試験に乗り出すのは京都大学発のベンチャー企業「トレジェムバイオファーマ」で、この研究を主導する京大大学院の高橋克准教授(当時)らによって2020年に創業されました。高橋准教授は「歯を生やすのは歯医者の大きな夢であり、大学院生の頃からこのテーマに取り組んできました。絶対にできるという確信がありました」と話しています。
    同社では生まれつき歯が生えない先天性無歯症の治療法として、2024年から臨床試験を開始し、実用化に向けて取り組んでいます。
    先天性無歯症のように生まれつき永久歯が欠如する原因は、骨形成たんぱく質の働きを、「USAG-1」と呼ばれる分子が阻害しているために起こると考えられており、歯の成長を邪魔する「USAG-1」の機能を抑制する抗体を開発することで、歯の成長を促そうというわけです。高橋准教授らはこの歯の成長をブロックする機能を抑制する中和抗体を開発し、これを先天性無歯症マウスに投与するという実験を行い、見事に歯の本数を増やすことに成功しました。フェレット、犬などでも同様の効果を確認でき、いよいよ人への実用化に向けて安全性の確認試験や医薬品の製造・品質の管理基準に沿った製剤準備を始め、2024年には先天性無歯症の患者を対象にした治験を開始する予定です。

    “第3の歯”が生えてくる

    同社では最終的には虫歯や歯周病で歯を失ってしまった部位に“第3の歯”として自身の歯を再生させる治療薬の実用化を目指しており、こちらはすでにマウスでは永久歯の次の歯として完全な形での新しい歯の再生に成功し、2030年に認可を取ることを目標にしているとのことです。
    この治療方法が定着すれば、生涯を通じて自分の歯で食事を出来るようになるため、健康寿命の延伸など世界の人々の健康で豊かな生活の実現に貢献することは間違いありません。
    歯の再生治療に夢が膨らみますが、いまあるご自身の歯を大切にする気持ちはかわりなく持っていただき、日頃の口腔ケアと歯科クリニックでの定期検診、クリーニングでご自身の歯を守り抜くようお願いしたいと思います。

    “第3の歯”が生えてくる
  • お口は全身の健康のみなもと

    歯と健康

    106の全身疾患と関係している

    106の全身疾患と関係している

    歯周病が全身疾患に及ぼす影響についてはすでにご存じの方も多いと思いますが、研究は日進月歩で今では106の全身疾患が歯周病と関係していると言われています。リウマチもその一つで、20年ほど前にリウマチ患者で歯周病にかかっている人の割合が高いことが初めて報告され、その後、米スタンフォード大学の研究チームによって歯周病によりリウマチの炎症が活性化されることが発表されると歯周病とリウマチとの関係が決定的となりました。
    リウマチは免疫の異常により関節の滑膜に炎症が起こり、関節の痛みや腫れが生じる自己免疫疾患で進行すると関節の変形や機能障害を来たします。日本国内で患者数は 82.5 万人と推定され、40〜60 歳台における発症が多く、女性の患者数は男性の約3.2倍といわれています。

    リウマチと歯周病との意外な関係

    歯周病菌の中でもとくにリウマチに関係がしているのはジンジバリス菌(P.g菌)で、このP.g菌はシトルリン化といって周囲のたんぱく質の形を変えてしまう性質があります。その形が変わってしまったタンパク質を生体側では異物とみなして抗CCP抗体という自己抗体を作り排除しようとします。関節リウマチの患者の約8割の血液中にこの抗CCP抗体が検出されることから歯周病とリウマチは一見違う病気に見えて、実は非常によく似た性格を持っているということが示唆されていますが、歯周病によって生み出された抗CCP抗体が血流にのって体内を巡り、関節の滑膜で暴れだし免疫バランスが破綻してリウマチの発症につながるのではないかと考えられています。
    実際に歯周病を放置するとリウマチの症状が悪化することが明らかになっていることから、歯周治療も並行して進めることが重要であるとされ、歯のクリーニングや歯みがき指導がリウマチの辛い症状の軽減に高い効果をあげています。
    これらのことから日々の口腔ケアを入念に行うことがリウマチ予防も含め、全身の健康維持にいかに重要なことであるかがわかります。とくにリウマチの患者さんは歯周病が進行しやすく、重症化しやすい傾向にあるので歯科医院での年3~4回の定期検診とクリーニング(PMTC)によって歯周病の予防処置や治療を受けることをおすすめします。

    リウマチと歯周病との意外な関係
  • 歯ぎしりの意外な原因とは?

    歯と健康

    歯ぎしりは噛みしめてストレス緩和

    歯ぎしりは噛みしめてストレス緩和

    就寝時の歯ぎしりはギリギリと耳ざわりな音がしますが、このときの噛みしめる力は50~100kgを超えるといわれています。食事の時の咬む力は数kgから30kg程度ですから、いかに異常な力であるかがわかります。睡眠中は無意識で抑制が効かないためですが、上下の歯が過剰な力でこすれ合うため歯が削れたり、破砕したりひびが入ったりするだけでなく歯肉への負担から歯周病を引き起こしたり、顎関節症の発症にもつながります。さらには頭痛、肩こり、腰痛、めまいなどを招くケースもあり、周囲の人も迷惑ですが、本人が一番たいへんな被害を被っているといえそうです。
    歯ぎしりの原因はさまざまに考えられていますが、不正咬合など噛み合わせが悪い場合のほか、精神的なストレスといわれています。噛みしめる行為にはストレスを緩和する効果があるとされており、脳が感じたストレスを歯ぎしりや噛みしめによって解消しようとしているのではないかということです。

    食物繊維摂取量に着目

    最新の研究で、ある栄養素と歯ぎしりとの意外な関係が発見されて話題をよんでします。今年の5月に岡山大学で発表された研究報告(岡山大学とノートルダム清心女子大学の研究グループによる報告)で、学生を対象にした調査で睡眠中の歯ぎしりをしている学生としていない学生で栄養摂取量を比較したところ、食物繊維摂取量が少ないほど睡眠中の歯ぎしりを起こしやすい傾向であることがわかったのです。実際に食物繊維摂取量が多い上位25%と下位25%を比較したところ、睡眠中に歯ぎしりをする学生はしない学生に比べ、有意に食物摂取量が少ないことが確認されました。
    普段から食物繊維を多くとっている学生は歯ぎしりを起こしにくいということから、睡眠中の歯ぎしりの改善に食物繊維摂取の重要性がクローズアップされたと同研究グループはその成果を述べています。 これまでの歯ぎしりの治療としては矯正治療によって噛み合わせをよくするほか、寝ている時にマウスピースを装着して力のかかり方をコントロールする方法などがあげられますが、新たに方法として食物繊維がなんらかのかたちで活かされる可能性もあり、今後の研究への期待が膨らみます。

    食物繊維摂取量に着目

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