
口もとの悩みの中で歯ぐきが気になるという方は少なくありません。「歯ぐきが下がって歯の根元の方まで見えてしまう」、「歯ぐきに近い部分で隣の歯との間に隙間ができて見栄えが悪い」etc.。この隣合う歯の隙間が黒い三角形に見えるので“ブラックトライアングル”と呼ばれ口元の審美性を損ねる原因の一つにあげられています。あるアンケート調査(小林製薬の調査)では、歯ぐきが下がると実年齢より9.8歳も老けて見えるという結果もあり、歯ぐきは意外にも注目されていることがわかります。
歯ぐきが下がることを“歯肉退縮”といいますが、審美的な問題だけでなく、むし歯や知覚過敏の原因にもなるので気がついたら早く対策を取りたいもの。歯肉退縮の主な原因には二つあり、一つは歯周病です。歯周病による歯肉の炎症が、歯を支えている歯ぐきの骨(歯槽骨)にまで及ぶと歯槽骨を溶かしていくため、歯ぐきが下がり、それに伴い、歯槽骨を覆う歯肉も下がって見えてしまうというわけです。
もう一つの原因はガシガシと強い力でブラッシングすることです。強過ぎるブラッシングによって歯肉に負担がかかり下がってきてしまうのです。歯の根元の方はエナメル質がなくなり、象牙質が剥き出しなのでむし歯や知覚過敏の原因のリスクを高めてしまいます。
歯肉退縮は痛みを伴わず徐々に進行していくため、気がついたときにはかなり悪化しているケースも少なくありません。普段から歯ぐきをチェックして、気がついたら放置せずに歯科を受診し歯周病であれば治療を受けることが大切です。歯周病治療とも重なりますが、歯ブラシの方法を今一度見直してみることもお薦めします。正しいブラッシングにより歯周病が改善されれば歯肉が引き締まり、健康的な歯肉を取り戻すことができます。
正しいブラッシング法はけっして力任せにせず、歯と歯肉の境目に歯ブラシを当てて軽い力で小刻みに動かすようにします。出血や腫れがあっても歯ブラシは必ず行ってください。ブラッシングせずにプラークを除去せず溜めておくことは歯周病を悪化させるだけだからです。ただ、その際は軟らかめのブラシで弱い力で丁寧にブラッシングします。
歯ぐきの退縮は加齢による影響も確かにあり、10年に数㎜ずつ退縮するといわれていますが、歯周病による退縮はこの比ではありません。口腔内のプラークが少ない状態を維持できれば、歯周病の進行を食い止め歯肉の退縮にもブレーキをかけることができます。年齢だからと諦めずに日頃のブラッシングと歯科医院による定期的な口腔内のクリーニングで若々しい口元を維持したいものです。


国民の8割がかかっているといわれる歯周病ですが、その実態を少し詳しく見てみましょう。厚生労働省では歯科疾患実態調査を6年ごとに行っていますが、この調査では歯周ポケットの有無と、歯肉出血という2つの側面から検査しています。2016年の調査では歯周ポケット(4㎜以上)の保有者の割合は45歳以上で過半数を占めており、最も多い世代は65〜74歳で約6割という結果でした。
また、歯肉出血がある人の割合は15歳以上のどの年齢層でも4割前後と一定していることがわかりました。
こうしてみると“国民の8割”といううたい文句は実態をやや上回っている感が否めませんが、これについては歯石がついているだけでも「歯周病の所見あり」とされていた改訂前(2005年、2011年)の評価方式の影響が大きいのではといわれています。
とはいえ、歯周病は中高年ともなると過半数の人が罹患し、むし歯とともに日本人が歯を失う2大原因であり、予防と早期治療がなにより大切であることには変わりありません。歯周病の予防と治療の原理はいたってシンプルで歯周病の原因となる『歯垢』を取り除くということに尽きます。その方法は歯科医院で行う専門的な『プロフェッショナル・ケア』と、患者さん自身による『セルフ・ケア(ブラッシング)』になりますが、この2つが揃ってこそ最大の効果が発揮されます。
セルフ・ケアで気を付けたいのは自分では磨いているつもりでも実は磨けていない人が意外に多いことで、その原因は磨きたい所に毛先がきちんと当たっていないためです。歯磨きといえば、小さい頃からむし歯にならないための食べカスの除去が中心となり、歯垢を落とすことはあまり意識されていないせいかもしれません。
歯垢を除去するためには歯ブラシの先を歯と歯ぐきの境目、つまり歯周ポケットにきちんと当ててその場所でブラシを小刻みに動かし、歯垢を掻き出すようにします。電動ブラシも同様に、ブラシを歯の付け根に当てるようにします。歯垢除去用の歯ブラシはヘッドが小さめで歯肉を痛めないよう軟らかめのブラシを選ぶとよいでしょう。
歯周病は“サイレントディジーズ(沈黙の病気)”といわれますが、先の厚労省の調査では「歯ぐきが痛い、腫れている、出血がある」と回答とした人が、65歳未満の成人では約15%前後、65歳以上では10%強と自覚症状を感じている人が少なくないことが先の厚労省の調査で報告されています。歯肉に違和感を感じたならば、そのまま放っておかずにできるだけ早く歯科を受診することをお薦めします。


CAD/CAMによる製作過程において口腔スキャナーを使って患者さんのお口の中をスキャンニングすれば、従来のように歯形をとったり歯形の模型をつくる必要もなく、スキャンニングしたデータのやりとりだけでコンピュータのモニター上で被せ物や詰め物を設計することができます。完成した設計データを切削マシン送って歯科材料のブロックから削り出せば被せ物や詰め物ができあがる仕組みで作業の効率化はもちろん、品質にばらつきがないなどメリットがあります。
歯科素材の選択については患者さんのご希望次第ですが、金属アレルギーの方にとってはメタルフリーの治療がリーズナブルな費用で受けられる点でなにより朗報といえるでしょう。強度を優先したい方の場合は従来の金属のものを、審美性や耐久性などベストのものをという方は自費診療によるオールセラミックスなどをお薦めします。
CAD/CAMによるハイブリッドセラミックスの治療はすでに被せ物の治療で保険適応となっており(2014年4月)、以降、その適応範囲が広がり、今回は詰め物として初めて認められたという経緯があります。金属アレルギーの方にとっては被せ物だけでなく詰め物についてもメタルフリーの治療がリーズナブルに受けられるということでたいへんな朗報といえます。
詰め物や被せ物についてどのような素材にするかは患者さんのご希望次第ですが、強度を優先したい場合は従来の金属のものを、審美性や耐久性などベストのものをという方は自費診療によるオールセラミックスなどをお薦めします。
いずれにしても今回の改定により日本人の口もとの審美性がさらにアップすることが期待されます。


私たちは“噛む”ことから、健康によいさまざまな恩恵を受けていますが、普段、こうした噛むことの健康効果について理解、意識して食事をしているか、実際の咀嚼回数はどれくらいか等、噛む全般についての調査が実施されました。「全国“噛む力”調査」(株式会社ロッテが調査実施)がそれとなり、全国47都道府県別に20代から60代の男女100名ずつ(計4700名)を対象にして実施されました。
噛む回数については、夕食時の一口あたりに噛む回数を調査。専門家は一口30回以上を推奨しているのに対して、96%が30回未満と予想以上に「噛む離れ」が進んでおり、食生活やライフスタイルの変化が顕著になっていることがうかがわれます。
そうした中でも、「噛む力」が最も高いのは60代女性で、最も低い世代は40代男性でした。「食事の際に『よく噛むこと』を意識していますか」という質問に対して、「あまり意識していない・まったく意識していない」と回答した割合が多いのも、同じく40代男性(70%)で、働き盛りといわれる40代男性は噛むことへの関心や意識が低い傾向にあることがわかりました。
県別にみると「噛む力」全国1位は秋田県で、2位は福島県、3位は福岡県と大分県が同率で続きます。上位県の秋田県と福島県ともに、噛むことの「意識」「行動」「知識」の3要素のどの設問においても得点が高かったこと、3位の福岡県は「よく噛むこと」への意識が高く、一口あたりに「20回以上噛む」割合が最も高いことがわかりました。一方、「噛む力」が最も低かったのは富山県で、「やわらかい食べ物」を多く食べている割合が74%と最も高かったことが影響しているようです。
全国47都道府県の名産品や名物料理などの一口あたり(約10g)の咀嚼回数も測定したところ、最も咀嚼回数が必要な名産品は熊本県の「馬刺しステーキ」(一口あたり115回)、続いて富山県の「しろえび(から揚げ)」(105回)、岐阜県の「鶏ちゃん」(95回)という結果になっています。噛みごえがある美味しい名産品をよく噛んで味わうことで噛むことを意識するきっかけづくりになればとのことです。
「噛むこと」には脳の活性化による認知機能改善や集中力の向上、口内の自浄作用のほかストレスの軽減をはじめ肥満防止、唾液のよるアンチエイジング効果、抗ウイルス作用など多くの効用が認められています。食事の際にこうした効用を意識しながら、一口づつよく噛むことで健康な生活を維持していきたいものです。


最近、耳にする言葉にフレイルという言葉があります。フレイルとは高齢者になって心身の活力(筋力、認知機能、社会とのつながりなど)が低下した状態をいいます。
海外の老年医学の分野で使用されている「Frailty(フレイルティ)」が語源になっていて、虚弱や老衰、脆弱などの意味がありますが、こうした変化に早く気づき正しく対応すれば、健康に戻ることができる変化を指しています。
フレイルとしてあげられているのは、体重減少(年間4.5kgまたは5%以上の体重減少)、疲れやすい(何をするのも面倒だと週に3〜4日以上感じる)、歩行速度の低下、握力の低下、身体活動量の低下の5項目です。3項目以上に該当するとフレイル、1または2項目の場合はフレイルの前段階であるプレフレイルと判断されます。
全身の身体機能の低下より先に社会参加など他者との交流が減ったり、口の機能が衰えることがきっかけといわれています。とくに口腔機能の衰えである”オーラルフレイル”がその入口となることも多いため、注意喚起がなされています。
口腔機能の低下は食べる機能の障害から栄養バランスの乱れ、低栄養、体重の減少、さらには心身の機能の低下につながる負の連鎖を引き起こすからです。
現在、厚労省でもフレイルについて注目し、2040年までに男女ともに健康寿命の3年以上延伸を掲げた「健康寿命延伸プラン」の具体的な取り組みの柱の一つとして「介護予防・フレイル対策、認知症予防」を位置づけています。
コロナ禍においては外出することが減り、人との交流が途絶えがちなりますが、自粛生活の長期化によってフレイルが進むということが最新のデータからわかってきました。確かに高齢者ではなくても、以前よりもやる気の低下や筋力の低下などを感じる方も少なくないのではないでしょうか。とくに口腔機能についてはマスク生活が長引くことからお口の周りの筋肉の衰えなど少なからぬ影響が出始めています。
オーラルフレイルは滑舌の低下のほか、食事の際にむせる、噛めないものが増えるなど普段の生活の中のささいなトラブルから始まります。食事もやわらかいものが中心となると、ますます噛む行為が減り、咀嚼機能の低下につながるなど悪循環に陥る危険性があります。以下にあげたチェック項目でお口の健康状態をセルフチェックしてみることをお薦めします。
オーラルフレイルの予防としてはささいな衰えに気づくこと、バランスのよい食事を心がける、かかりつけの歯科医を持つことの3点があげられています。かかりつけ歯科医に定期的に通って検診とクリーニングをすることは小さな変化に気づきやすく、早期に対策が取れるというメリッとがあります。全身の健康を支える基本は日々の栄養管理といえ、何を食べるかということはもちろんですが、しっかり噛んで食べるということもまた、同じくらい重要だということも忘れないでください。オーラルフレイルの予防で全身の健康維持を実践していきたいものです。

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