
私たちは“噛む”ことから、健康によいさまざまな恩恵を受けていますが、普段、こうした噛むことの健康効果について理解、意識して食事をしているか、実際の咀嚼回数はどれくらいか等、噛む全般についての調査が実施されました。「全国“噛む力”調査」(株式会社ロッテが調査実施)がそれとなり、全国47都道府県別に20代から60代の男女100名ずつ(計4700名)を対象にして実施されました。
噛む回数については、夕食時の一口あたりに噛む回数を調査。専門家は一口30回以上を推奨しているのに対して、96%が30回未満と予想以上に「噛む離れ」が進んでおり、食生活やライフスタイルの変化が顕著になっていることがうかがわれます。
そうした中でも、「噛む力」が最も高いのは60代女性で、最も低い世代は40代男性でした。「食事の際に『よく噛むこと』を意識していますか」という質問に対して、「あまり意識していない・まったく意識していない」と回答した割合が多いのも、同じく40代男性(70%)で、働き盛りといわれる40代男性は噛むことへの関心や意識が低い傾向にあることがわかりました。
県別にみると「噛む力」全国1位は秋田県で、2位は福島県、3位は福岡県と大分県が同率で続きます。上位県の秋田県と福島県ともに、噛むことの「意識」「行動」「知識」の3要素のどの設問においても得点が高かったこと、3位の福岡県は「よく噛むこと」への意識が高く、一口あたりに「20回以上噛む」割合が最も高いことがわかりました。一方、「噛む力」が最も低かったのは富山県で、「やわらかい食べ物」を多く食べている割合が74%と最も高かったことが影響しているようです。
全国47都道府県の名産品や名物料理などの一口あたり(約10g)の咀嚼回数も測定したところ、最も咀嚼回数が必要な名産品は熊本県の「馬刺しステーキ」(一口あたり115回)、続いて富山県の「しろえび(から揚げ)」(105回)、岐阜県の「鶏ちゃん」(95回)という結果になっています。噛みごえがある美味しい名産品をよく噛んで味わうことで噛むことを意識するきっかけづくりになればとのことです。
「噛むこと」には脳の活性化による認知機能改善や集中力の向上、口内の自浄作用のほかストレスの軽減をはじめ肥満防止、唾液のよるアンチエイジング効果、抗ウイルス作用など多くの効用が認められています。食事の際にこうした効用を意識しながら、一口づつよく噛むことで健康な生活を維持していきたいものです。


最近、耳にする言葉にフレイルという言葉があります。フレイルとは高齢者になって心身の活力(筋力、認知機能、社会とのつながりなど)が低下した状態をいいます。
海外の老年医学の分野で使用されている「Frailty(フレイルティ)」が語源になっていて、虚弱や老衰、脆弱などの意味がありますが、こうした変化に早く気づき正しく対応すれば、健康に戻ることができる変化を指しています。
フレイルとしてあげられているのは、体重減少(年間4.5kgまたは5%以上の体重減少)、疲れやすい(何をするのも面倒だと週に3〜4日以上感じる)、歩行速度の低下、握力の低下、身体活動量の低下の5項目です。3項目以上に該当するとフレイル、1または2項目の場合はフレイルの前段階であるプレフレイルと判断されます。
全身の身体機能の低下より先に社会参加など他者との交流が減ったり、口の機能が衰えることがきっかけといわれています。とくに口腔機能の衰えである”オーラルフレイル”がその入口となることも多いため、注意喚起がなされています。
口腔機能の低下は食べる機能の障害から栄養バランスの乱れ、低栄養、体重の減少、さらには心身の機能の低下につながる負の連鎖を引き起こすからです。
現在、厚労省でもフレイルについて注目し、2040年までに男女ともに健康寿命の3年以上延伸を掲げた「健康寿命延伸プラン」の具体的な取り組みの柱の一つとして「介護予防・フレイル対策、認知症予防」を位置づけています。
コロナ禍においては外出することが減り、人との交流が途絶えがちなりますが、自粛生活の長期化によってフレイルが進むということが最新のデータからわかってきました。確かに高齢者ではなくても、以前よりもやる気の低下や筋力の低下などを感じる方も少なくないのではないでしょうか。とくに口腔機能についてはマスク生活が長引くことからお口の周りの筋肉の衰えなど少なからぬ影響が出始めています。
オーラルフレイルは滑舌の低下のほか、食事の際にむせる、噛めないものが増えるなど普段の生活の中のささいなトラブルから始まります。食事もやわらかいものが中心となると、ますます噛む行為が減り、咀嚼機能の低下につながるなど悪循環に陥る危険性があります。以下にあげたチェック項目でお口の健康状態をセルフチェックしてみることをお薦めします。
オーラルフレイルの予防としてはささいな衰えに気づくこと、バランスのよい食事を心がける、かかりつけの歯科医を持つことの3点があげられています。かかりつけ歯科医に定期的に通って検診とクリーニングをすることは小さな変化に気づきやすく、早期に対策が取れるというメリッとがあります。全身の健康を支える基本は日々の栄養管理といえ、何を食べるかということはもちろんですが、しっかり噛んで食べるということもまた、同じくらい重要だということも忘れないでください。オーラルフレイルの予防で全身の健康維持を実践していきたいものです。


むし歯の治療というと金属や高価がセラミックによる詰め物が一般的でしたが、ここ10年間で詰め物の素材も進化し、コンポジットレジンとよばれる白い修復材料が多く用いられるようになってきています。
コンポジットレジンとは合成樹脂(コンポジットは合成)を意味し、レジンは樹脂(プラスチックのことを指します)のことをいいますが、歯科用のコンポジットレジンは合成樹脂にセラミック粒子やシリカ(ガラス)の粉末を合わせた複合プラスチック素材です。日本では1978年から保険適応になりましたが、当時は耐久性や変色などの問題がありそれほど普及しませんでした。その後、素材の研究開発が進み、なかでもコンポジットレジンは飛躍的な進歩を遂げて、いまや夢の歯科材料としてむし歯治療だけでなく歯の形を修復したり、歯のない部分を補ったりする治療法としても注目を集めています。
コンポジットレジンによる修復法は多くの利点があるため普及が進んでいますが、その一つはなんといっても白い素材なので周囲の歯となじむ自然な仕上がりになることがあげられます。さらにできるだけ削らない最小限の治療が可能であることです。専用の器具を用いてむし歯の部分だけを取り除き、そこに接着材を塗ってコンポジットレジンを充填して固めるので感染の危険性も少なく、従来のようにむし歯以外のところまで必要以上に大きく削る必要がありません。削る量を最小限にできるので歯の寿命を伸ばすことができる治療といえます。
歯科治療で一般的に用いられているコンポジットレジンは「光重合型」で、ペースト状の柔らかいレジンに直接強い光(専用のLED)を3秒から10秒ほど当てることで固まる性質があります。従来のように型を取って詰め物を作る必要がないのため、治療時間は大幅に短縮されます。むし歯の部分を取り除いてコンポジットレジンを充填して固めて終了となるので、治療そのものは約30分程度で通院も1回で完了します。しかも保険が適用されるので経済的にも負担になりません。
ただし、コンポジットレジンも万能というわけではなく、金属やセラミックにような強度がないため、強い力がかかると破損したり、破損しないまでも摩耗しやすいということがあります。また、水分を吸って着色や変色するなど経年劣化しやすいことなどがありますが、金属の詰め物は見た目に抵抗がある方や金属アレルギーの心配などの理由からコンポジットレジンを希望する患者さまが多く人気が高い治療法です。
むし歯が深かったり、隣り合う歯との境目に大きく広がった虫歯の場合などはコンポジットレジンンによる治療が適応にならないため、できるだけむし歯が小さなうちに発見することが有効だといえます。むし歯の早期発見のために、さらにはコンポジットレジンの治療後のリカバリー(欠けや変色の修正が起こっても、容易に修正することができます)という点でも定期的な歯科検診を受けることが有効だといえます。


コロナ禍での健康志向もあり、オーラルケアへの関心が高まっています。それとともに歯ブラシや歯磨き粉などの市場が伸びていて、なかでも2万円もする高機能の電動歯ブラシがよく売れているとのこと。マスクをすることで自分の口臭が気になりだしたという人も少なくないようですが、自宅でのセルフケアを今一度見直して充実を図ろうという姿勢がうかがえます。
電動歯ブラシはブラシの形状にも各メーカーで特色があり、そのブラシが高速で振動、あるいは回転をすることで汚れを除去するという仕組みが一般的です。1分間に1万回以上は当たり前、3万回という超高速振動をするものもあり、その進化は止まりません。
ただ、歯磨きでもっとも重要なことの一つはプラーク(歯垢)がしっかり除去できるかどうかですが、粘着性のあるプラークはそう簡単には落ちず、一箇所につき歯ブラシの毛先で最低でも20回程度当たる必要があると言われています。そのため手磨きでは約5秒を要するところ、電動歯ブラシでは1秒もかからず、腕も疲れず効率もよいというので人気も高いのではないでしょうか。ただ、どんなに優れた商品も使い方次第といえ、高性能の電動歯ブラシを使っているから大丈夫と思っていても、歯科検診で磨き残しを指摘されたり、歯周病が進行していたりするケースがあるので過信は禁物です。
電動歯ブラシの注意点として、日本歯周病学会では「電動歯ブラシだけでお口の中を隅々まで磨くのは難しく、長期に使用することにより歯が余分に磨り減ってしまう可能性」を指摘しています。
歯周病で弱っている歯肉に、電動歯ブラシの高速振動ブラシを力任せに当ててしまって歯肉を傷つけたり、ゴシゴシ磨いたり、長時間ブラッシングしたりしていると、歯のエナメル質が磨り減ってしまいます。そのため、同学会でも「まずは微妙な力や動かし方のコントロールができる、普通の歯ブラシ」を薦めています。
電動歯ブラシのメリットも享受しつつ、オーラルケアもしっかりしたいという方にはワンタフトブラシの併用がお薦めです。ブラシの先が尖った円錐状の手磨き用のブラシで、電動歯ブラシの磨き残し対策用にとても役に立ちます。歯ブラシが届きにくい奥歯や歯と歯の間、歯と歯肉の境目などもこの尖ったブラシの先を当ててやさしくブラッシングすることでプラークをしっかりと除去することができます。掃除機でいえば、隙間ノズルのような感覚で狭い部分、届きにくいところもピンポイントでクリーンニングすることができます。
電動歯ブラシは腕や握力などに衰えのある方でも楽に歯ブラシができるというメリットもあります。適材適所でそれぞれのメリットを生かしながら、ご自宅での日々のセルフケアをしっかりと実践していただければと思います。


詰め物や被せ物をつくる際にはまず歯の型取りをしますが、この工程を“印象採得”といいます。トレーに盛られたペースト状のものをトレーごと歯の上から押しつけて型取りをしますが、この歯形に石膏を流し込んで固めると患者さんの歯の形態が正確の再現できるわけです。この再現した石膏模型をもとに詰め物や人工歯を製作したり、矯正治療の際の歯並びの確認を行ったりします。
歯形を取る際に使うペースト状のものを印章材といいますが、アルジネートというピンク色の材料とシリコンラバーを使った弾力に富む材料の2種類があります。
アルジネートとは聞き慣れない言葉ですが、粉末状のアルギン酸ナトリウムと石膏を混ぜたものに水を加えて練って用います。アルギン酸にはどろどろしたものを固める働きがあるために使われていますが、身近なところではかまぼこなどの練り製品にも用いられています。
そのほか、冷えると固まるという性質を利用して寒天も印象材として使われてきた歴史があります。かまぼこに続き、寒天となじみのある材料が続きますが、この両者を合体させた「寒天アルジネート連合法」が現在、最もポピュラーに用いられている方法です。歯の凹凸や歯ぐきとの境目などを細かい部分にまず寒天材を注入し、その上からトレーに盛ったアルジネートを被せます。操作が容易で安価であるため保険適用もされています。
ただ、寒天材は9割が水ということもあり強度が弱く、取り出すときに細部がちぎれたり、変形する恐れがあります。そのため、インプラント治療やセラミックの被せ物などより精密な型取りが要求される場合はシリコン印象材といってゴム系の材料を用います。細部まで精密な印章が取れ、型取り後の変形がないのでそのまま技工所に送ることができるなどのメリットがありますが、アルジネートに比べて材料費が高く、保険適用にはなっていません。
詰め物や被せ物は土台となる支台歯と精密に合致すること(適合性といいます)が重要なポイントで、適合性が悪いと両者の間に隙間ができてむし歯の原因になったり、歯肉が腫れたりトラブルの原因となる場合があります。ですから精密な型取りが被せものを長持ちさせ、むし歯の再発や歯周病を予防するといえます。
印象材の中の気泡を抜く作業も重要であり、さらには歯や歯肉の表面に唾液や血液、浸出液などが残らないように細心の注意を払います。簡単に型取りしているように見えて印章材を作る歯科衛生士さんの熟練の技が込められているのです。
なお、型取りの際に嘔吐反射がでやすかったり、鼻呼吸がしにくいなどの理由で苦手という患者さんは少なくありません。早く固まるように材料を調整するなど配慮しますので遠慮なく申し出てください。
正確な型取りのためにも健康な歯肉は欠かせません。歯肉が腫れていたり出血したりしてはいけないのでしっかりと歯肉の治療も行いますが、普段からの口腔ケアを怠らず、引き締まった歯肉を維持するように心がけましょう。

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