歯科コラム

歯科コラム

  • 現代人に増えている味覚障害

    歯と健康

    中村歯科コラム:健康な人の舌

    味蕾を大切に

    食事の味にはちょっとうるさい方のことを『舌が肥えている』という表現をしますが、事実、味覚は主に舌の表面にある味蕾という微少感覚器官が感知します。正確には味蕾の中のある味センサーという細胞ですが、味覚は食べ物や飲み物が腐っていないか、害はないかという判断をする重要な役割も果たしています。塩の過剰摂取を防いだり、バランスよく栄養が摂れるのも味覚があればこそ。しかし、現代においてはこの味覚に異変を感じている人が増えているというのですから心配です。
    そもそも人が舌で感じる味覚は甘味、塩味、酸味、苦味、旨味の5種類です。辛味は味覚ではなく、痛みや熱さといった感覚に分類されます。英語のHOTという単語に「辛い」という意味があるのは的を射ているわけです。
    ちなみに旨味は1908年に東京帝国大学教授の池田菊苗氏が昆布出汁からグルタミン酸塩を抽出し、旨味成分であることを発見しました。旨味を感じなくなると食事が美味しく感じられなくなるばかりでなく、食欲が減退して生きる気力さえなくしてしまうことがあるそうですから、影響力は半端ありません。
    こうした味覚の異常は味覚障害といわれ、味覚減退や味覚消失のほかに、自発性異常味覚(なにも食べていないのに特定の味がする)、異味症(そのものの本来の味と異なった味に感じられる)、解離性味覚障害(特定の味覚のみがわからない)、部分的味覚障害(舌口腔内の特定の部位が味を感じない)などがあります。

    高齢者は味蕾の総数が3分の1に減少

    味覚障害の原因は亜鉛や鉄などの微量金属の欠乏のほか、薬の副作用や口腔カンジダ症など細菌の繁殖やドライマウスなどによる唾液量の低下、味蕾細胞の機能不全、糖尿病などの全身性疾患などさまざまあり、いくつかの原因が絡み合って発症することも珍しくありません。
    高齢者の味覚の減退は味蕾の総数が年齢とともに減少するためで、高齢者では新生児の半分から3分の1程度になるといわれています。
    また最近、若い人に増えているのは過度の舌の清掃が原因となるケースです。
    歯科疾患実態調査(厚生労働省2016年)でも「舌の清掃」ついて「行っている」と回答した人は25歳から29歳の世代で多く、男性の約30%、女性は40%近くにのぼります。舌の清掃それ自体はよいことですが、方法次第では味覚障害を招く恐れがあるので気をつけたいものです。舌の表面はデリケートなので硬い歯ブラシではなく、市販もされている専用の舌ブラシで1日1回、優しく表面をなでる程度で充分です。力任せにゴシゴシとすることは避けてください。強くこすると舌の表面が傷ついて炎症を起こし味細胞が破壊されるおそれがあるからです。
    味覚に違和感を生じる場合は、耳鼻咽喉科や内科のほかに歯科でも受診可能です。原因にもよりますが亜鉛の錠剤や唾液分泌を促す投薬により、味細胞は再生され1〜3ヶ月程度で症状が改善される場合が多いので、ご相談をいただければと思います。

    中村歯科コラム:舌用清掃器具
  • 歯列の崩壊を招く欠損ドミノとは

    歯と健康

    中村歯科コラム:奥歯の欠損

    歯の欠損の現状

    現在、あなたには何本の歯がありますか?と聞かれてすぐに答えられる人は意外と少ないのではないでしょうか。差し歯や金属などを詰めた治療済みの歯も含めた本数で、ブリッジや入れ歯になっていて歯根がない部分は除きます。
    永久歯は親知らずの4本を含めると32本ありますが、年齢とともにこの本数が減っていくというのが現実です。平成28年の歯科疾患実態調査によると20本以上の歯を有している人の割合は40~44歳では98%ですが、60~64歳では85%、70~74歳で63%、85歳以上になると25%と、4人に1人だけとなってしまいます。
    歯はできるだけ失いたくないもの。ただ、万が一、1本でも失ってしまった場合にはそのまま放置することだけは回避していただきたいと思います。それ以上、歯を失わないためにも噛み合わせを回復する治療を受けることが大切なのです。それによって将来、残せる歯の本数が大いに違ってくるからです。

    欠損部分はインプラント等で機能回復を

    歯を失った時にまっ先に気になるのは見た目ではないでしょうか。前歯であれば、失った部分が非常に目立つのでそのまま放置する方はほとんどいらっしゃらないでしょう。ただ、奥の方になると大きな口さえ開けなければ大丈夫と思ってそのまま放置してしまわれる方がいるかもしれません。しかし、その判断はたいへん危険なことで、歯を失ったダメージというのは徐々に、しかし確実に現れてきます。
    鏡の前でご自身の歯列を確認してみてください。U字型に配置されていることがわかりますが、この形には意味があって、隣り合う歯が支え合ってこのアーチを維持し歯列の強度を保っているのです。このアーチ型の構造は強度が必要とされる橋や屋根など建築物でよく見ることができます。
    ところが支えている歯が1本でも失われると隣同士で拮抗していた力のバランスが崩れ、アーチ型が維持できなくなります。そのため、タガがはずれた樽のように歯が倒れたり隙間が空いたり、とくに前歯に影響がでると、俗に言う“出っ歯”のようになってしまったりします。
    それだけでなく、挺出(ていしゅつ)といって、欠損歯と噛み合っていた歯が突出するように移動してきます。そのため、長く伸びたように見えるのですが、これは噛み合う相手がいなくなることで本来の位置を維持できなくなるためです。こうなってしまうと元に戻すことが難しくなり、のちに差し歯やインプラントをする際に困難が伴うことになります。
    1本の歯の欠損が隣り合う歯へと次々と影響していき、まるでドミノ倒しのように歯列・咬合の崩壊が進行していくこの“デンタル・ドミノ”を招かないためにも、歯を失ってしまった場合は放置せず、インプラントやブリッジ、義歯など噛み合わせの機能回復のための治療を受けておくことが大切なのです。

    中村歯科コラム:キレイな歯並び
  • お口のケガを防止するマウスピースの重要性

    歯と健康

    中村歯科コラム:ラグビー選手はマウスピース活用しています

    マウスピースが口腔内のケガ防止に貢献

    巷にはラグビーファンが急増中ですが、あの激しいパフォーマンスを支えている防具の一つにマウスピースがあります。マウスガードともいいますが、ラグビーだけでなく、アメリカンフットボール、アイスホッケー、フィールドホッケー、ラクロス、ボクシング、空手など幅広いスポーツで使用されています。
    マウスピースは口腔内のケガ防止のために格闘技などのスポーツで使用され始めました。実際に装着することでどれくらいケガが防止できるのか、アメリカでコンタクトスポーツをする中高生2470名を調べた結果、マウスピースを装着していなかった選手の55.1%が口腔内にケガを発症していたのに対して、装着していた選手たちの発症率は2.5%とほとんどの選手が安全に運動することができていました。その差は歴然といえ、マウスピースによるケガの防止効果はたいへん大きいといえます。
    口腔内の外傷だけでなく、頭部への衝撃の緩和などの効果もあります。こうした安全性の向上のほか、筋力の向上、精神面の安定などにも寄与するといわれています。

    パフォーマンスの向上も期待できる

    マウスピースを噛み締めることで瞬発力や集中力が高まることが知られており、精神的に落ち着いてプレーができる、呼吸が楽になるという選手もいます。マウスピースによって下あごの位置が安定するため、身体のバランスがよくなることもケガの防止のみならず、パフォーマンスにも影響しているといわれています。噛み合わせを根本的に治療するために矯正治療を受けるスポーツ選手が少なくないことからも、噛み合わせの重要性がうかがえます。
    いずれにしろ、マウスピースによるパフォーマンスの向上を実感する選手が増えていて今ではテニス、サッカー、スノーボーから砲丸投げややり投げなどの陸上競技、モータースポーツまで裾野を広げています。
    こうしたスポーツ用マウスピースはスポーツ店で扱っているほか、歯科医院で歯型を取って選手1人ひとりに合わせて作ることもできます。スポーツ用のマウスピースを作製できる歯科医院は限られますが、オーダーメイドによるマウスピースは選手の口腔にフィットし、微妙な噛み合わせまで考慮して製作されるので機能性はもとより快適さでも大きな差が出てくることはいうまでもありません。
    アメリカでは試合中のマウスピースの装着によって、年間 20万件以上の口腔に関するケガを未然に防いでいるという報告もありますが、日本ではまだまだ普及が十分とはいえません。子どもから大人まで運動するときにはマウスピースをするのが当たり前となり、習慣化される時代が早く来ることを願っています。

    中村歯科コラム:スポーツマウスピースは口腔ケアに役立つ
  • ズキンとくる知覚過敏は早めの対応を

    歯と健康

    中村歯科コラム:ズキンとくる知覚過敏

    力まかせの歯ブラシは危険

    最近、「歯がシミる」という訴えがよくあります。かき氷や冷たい飲み物にキーンと痛みが走るという方や、甘い物や温かいものを飲食したときにズキンとする、歯ブラシの先が当たっても痛いとその症状もさまざまです。
    その痛みはむし歯にも負けず劣らずの一撃ですが、むし歯との違いは痛みの持続時間です。むし歯はズキズキと痛みが持続するのに対して、10秒以内におさまるようであれば、知覚過敏症が疑われます。正式には「象牙質知覚過敏症」といって、冷たいものより温かいものが染みる方がより重症といわれています。
    歯の表面は厚さ1~2㎜程度のエナメル質で覆われていますが、歯ぐきの中に埋もれている部分(歯根)にはエナメル質はなく、比較的やわらかなセメント質が覆っています。その奥には歯の本体ともいえる象牙質があり、細い管状の組織(象牙細管)が集まっています。象牙細管のなかは組織液で満たされていてこの細管を通して外部の温度刺激や圧力などが敏感に伝わると考えられています。
    加齢や歯周病によって歯肉がやせて歯の根元が露出してくるとセメント質が剥き出しになり、そこを強い力でごしごしと歯ブラシするとセメント質やその奥の象牙質が傷つき知覚過敏がおきやすくなるといえます。

    ストレスも原因の一つに

    歯が染みると感じたら、むし歯の有無も含めて歯科医院での診断を仰ぐことをお勧めします。知覚過敏症の治療は露出している象牙質に薬を塗布したり、レジン(樹脂)・歯科用セメントなどでコーティングします。そのほか象牙細管内組織液を固める方法(薬やレーザーを使用)、露出した象牙細管をレジンで埋める方法もあります。治療は1回で終了するわけではなく、コーティング材がすり減るので数ヶ月ごとに足していく必要があります。ただ、その間に歯の再石灰化が進んで表面が修復されていけば症状が軽くなっていきます。
    歯の根元が削れたようにえぐれてしまっていることが知覚過敏症の方にはよくありますが、最近は歯ぎしりやくいしばりもその原因として考えられています。こうした歯ぎしりや食いしばりのある方は歯ぎしり防止のマウスピースを使用する場合もあります。ナイトガードといって就寝中に装着します。
    知覚過敏症予防のためには歯磨き粉は研磨剤の入っていないものを選び、やさしく丁寧な歯ブラシを心がけてください。正しいブラッシングで1~2週間で症状が改善する方もいらっしゃいます。市販されている知覚過敏用の歯みがき粉には象牙質をカバーする働きのある硝酸カリウムという薬用成分が入っているので症状を緩和してくれます。
    知覚過敏症も症状が重い場合は歯の神経を除去する方法がとられますが、できれば神経は温存したいもの。重症化しないうちに歯科医院に相談して適切な処置と正しい歯磨き法の習得をされることをお勧めします。

    中村歯科コラム:知覚過敏は早めの対応を
  • 歯周病菌とむし歯菌の違いを知って予防に役立てよう

    歯と健康

    中村歯科コラム:歯周病菌とむし歯菌の違いを知る

    むし歯のきっかけをつくるミュータンス菌

    むし歯と歯周病は日本人が歯を失う2大原因ですが、どちらも口腔内にいる細菌によって引き起こる感染症です。それぞれ原因菌が異なり、発症する部位も違っています。ただ、どちらも細菌の塊であるプラーク(歯垢)の中で増殖して口腔内に弊害をもたらします。ときとしてうやむやになりがちなこの2大疾患について改めてその違いを確認しておきたいとい思います。
    むし歯はむし歯菌が糖質をえさに代謝してできた酸により歯の表面のエナメル質を溶かすことから発症します。さらに進行すると奥のセメント質や象牙質まで侵し、神経と血管からなる歯髄にまで達して激痛を引き起こします。
    むし歯の原因となる細菌はミュータンス菌とラクトバチラス菌が代表的ですが、生まれたばかりの赤ちゃんにはむし歯菌は存在しません。幼児の頃に母親や周囲の大人が口移しで食べ物をあげたりすることで感染します。ミュータンス菌はネバネバした歯垢を形成してむし歯の発症を促し、続くラクトバチラス菌がミュータンス菌のつくったネバネバをすみかに増殖してむし歯を重症化させます。ミュータンス菌は一度感染して定着してしまうとなかなか減らすことができないので、日頃からその活動を抑制するケアが重要になります。

    血液をえさにする歯周病菌も

    歯周病菌は以前約300種類といわれていましたが、今では800種類以上とも報告されています。口腔内にいる常在菌の中でも最強のグループに分類されるのが、P.g.菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)、T.f.菌 (タンネレラ・フォーサイシア)、T.d.菌(トレポネーマ・デンティコーラ)の3菌種です。これらの細菌は歯ぐきや口腔粘膜にしっかりと付着し内毒素により歯周組織を炎症させ、あごの骨を溶かします。なかでもP.g.菌は親玉的な細菌で血液をえさとして出血を伴う症状によりいっそう増殖して進行を早めます。早急に出血を止め、細菌のすみかである4㎜以上の歯周ポケット内のクリーニングにより細菌を一掃することが必要です。

    予防にも役立つ口腔内細菌検査

    ご自身の口腔内にいる細菌の種類やむし歯と歯周病のどちらになりやすいかなどについては口腔内の細菌検査でわかります。予防にも役立てることができるので、唾液の量を測る唾液検査なども合わせて是非一度は受けていただくことをお勧めします。
    いずれにしろ、どちらの疾患にもならないことが一番であることはいうまでもありません。むし歯も歯周病も普段のケアと定期検診・クリーニングによって十分に予防することができる病気であることを知って、口腔内の健康に留意していただければと思います。

    中村歯科コラム:歯周病菌とむし歯菌の違いを知り予防に役立てる

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