鼻呼吸で熱中症予防
鼻は天然のマスク
長期間のマスク着用で気をつけたいことは、知らず知らずのうちに口呼吸をしていてる人が増えているという点です。マスクをしたときには呼吸をしにくくなるため、より楽に息が吸える口呼吸をしてしまいがちになるためですが、本来呼吸は鼻から吸うのが基本です。以前も取り上げましたが口呼吸については健康上、さまざまな弊害があり、とくに夏場においは熱中症予防という観点からも注意が必要です。
口で呼吸ができるのは人間だけでほかの哺乳動物は皆、鼻呼吸です。このことは人が声帯を使って話すことと関係が深く、人類の進化の過程で得た特殊な呼吸法といえます。
口から吸うか、鼻から吸うか、空気が肺まで届くのにはかわりはないと思うかもしれませんが、そこには大きな違いがあります。
鼻には鼻腔という粘膜で覆われた空間が備わっており、この鼻腔を通ることで空気中のチリや花粉、細菌やウイルスといった空気中の浮遊物が鼻腔の内側の粘膜に付着することで取り除かれ、さらには冬場など乾燥した冷たい空気が温められると同時に湿気を帯び、気管支や肺へのダメージを軽減することができるのです。鼻が“天然のマスク”といわれるゆえんです。
脳の冷却装置
さらには鼻腔の奥には脳に繋がっている毛細血管がたくさん通っているので、鼻呼吸によって冷たい空気を通すことで毛細血管を通る血液を冷やして脳へと送ることができるのです。このとき鼻粘膜の水分が蒸発することによる気化熱も利用して脳を冷やしているのです。脳は熱に弱いため、過熱を防ぐシステムが備わっているのですが、鼻呼吸による冷却システムもその一つといえます。
このように鼻呼吸には空気清浄機能であったり、エアコン、加湿器、ラジエーター(冷却装置)と多彩な機能が備わっていますが、口呼吸にはこうした機能が伴わないため、いかに無防備に空気を体内に取り込んであるかがわかります。それだけでなく、口呼吸は虫歯や歯周病のリスクを高めたり、口臭が強くなるなどの弊害もあります。その理由は口呼吸をするとどうしても口の中が乾くため、唾液によって口の中を洗い流してくれる自浄作用が働きにくくなるためです。この自浄作用はむし歯予防や歯周病予防の一つになっていて、口臭も抑えられているといえます。
夏場こそ、鼻呼吸によるラジエーター機能をフル活動させたいところですが、マスク下においては温かい吐息を再び吸うことになり、脳の冷却がうまく働かない恐れが生じます。そのため、頭がぼーっとしたり、頭痛を起こすなど熱中症のリスクも高まりますので、そうしたことのないよう屋外や人の密集していない換気の良い場所ではマスクを外して新鮮な空気を鼻から送り込むことが必要です。
長引くマスク生活においては、マスクの下で固まりがちな表情筋をよく動かしたり、筋力の低下しがちな口の周りや舌の筋力を鍛えるなどの筋トレが有効になります。きちんと鼻呼吸をしているかご自身で確認して、もし口呼吸であれば、本来の鼻呼吸を取り戻して夏場を乗りきっていきたいものです。
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